剣道を約20年ぶりに始めたという女性から、「足の甲が痛くなったけれど、剣 道を続けたいし、どうしたらいいか」という質問を受けました。
中国の医師資格を 持っているという理学療法士に鍼治療を受け、さらに「靴を履いて剣道をするように」 というアドバイスを受けたそうですが、どうも剣道というものを理解していただけて ないようだとのことで、私に連絡されたのだそうです。

ランニング動作や、踏み込みの動作を繰り返していると、中足骨に負担がかかります。
この負担が強くなると、骨の膜に炎症を起こす「疲労性骨膜炎」に、さらには「疲労骨折」にいたることもあります。

骨は、「壊されては修復され」、「壊されては修復され」、の繰り返しで、常に 新しい骨に生まれ変わっているものですが、負担が大きすぎて、壊される量が修復される能力を上回ってしまうと、少しずつ骨の破壊が進行していきます。これが重なったものが、疲労骨折です。
疲労骨折を防ぐためには、破壊される量を抑えるか、修復される速度を速めるかのどちらかしかありません。

カルシウムを2倍摂取したからと言って、また何かの薬を使ったからと言って、骨の修復速度が2倍や3倍になることはありません。 とすると、疲労骨折を効果的に防ぐためには、破壊される速度を1/2、
1/3に低下させることを考えるべきでしょう。

衝撃を軽くするために、次のようなことがあげられます。
何と言っても、
(1)衝撃を受ける回数を少なくすることが必要です。その他、
(2)衝撃の強さを弱めること、
(3) 衝撃によって生じる骨の歪みが最小限になること、などが考えられるでしょう。

(1)のために、練習時間を短くすること、練習の総量を調整することが必要です。
(2)のために、肥満があるようなら減量を考えるべきでしょう。
クッションのある靴をはくこともいいのかもしれませんが、なかなか剣道で靴履きというのも不自然なものです。土踏まずを持ち上げる、アーチサポートタイプの足底板と、それを固定する足サポーターの組み合わせがいいのかもしれませんが、木の床でサポーターが滑りやすかったりして、なかなか使っていただけないのが現状です。

(3)のためには、やはりテクニックでしょう。
同じ体重の人が、同じ高さから飛び降りても、一方の人がドスンと着地したのに対して、もう一方の人がふわっと着地できるかの違いと考えていいでしょう。
前に踏み込む際に、ドタバタと移動するのではなく、すっと踵から着地して、最後には足の親指を使って床を蹴りだす意識で体重移動させます。
負担に負けないためのトレーニングとして、足の下に敷いたタオルを足の指でたぐり寄せる「towel gather」といった方法が勧められます。

また外反膝(X脚)や内反膝(O脚)があるような場合は、それぞれ足底の内 側、外側に負担がかかってしまいます。
足だけの治療で効果がない場合には、テーピン グなど、膝への治療も考慮されるべきでしょう。